症例35

本例は医師からの報告。 患者:女性

サーバリックス2回目接種後

前腕、下腿で血管に沿って皮膚に細長い紅斑が出現。掻痒感なし。これは現在までの4 年間、出没を繰り返している(生理前に出現することが多い)。

サーバリックス3回目接種後

3日目に強い眩暈に襲われ、吐き気を催した。しかし部活のバレーボールはできていた。耳鼻科を受診し、異常なしと言われた。

接種447日後

背部疼痛(重篤性:非重篤)を発現、悪寒戦慄(重篤性:非重篤)を発現。 背部に疼痛を感じ、悪寒戦慄が出現し、疼痛は全身に広がった。

接種448日後

帯状疱疹を疑い皮膚科を受診したが、根拠がないと言われた。

接種451日後

背部痛は暫く続いたため、A 病院へ紹介された。脱力に悪化傾向があり、入院となった。

接種451~452日後

背部痛増強し、腱反射が消失した。脱力は進行し、箸ももてず歩行ができなくなり車椅子を使用した。特にワクチンを3 回接種した左側の脱力が強かった。

この頃、脱力は上肢・下肢だけでなく瞼が挙がらない、ろれつが回らない、寝返りも打てないなど、全身で起こっていた。

指先のしびれ、足のしびれ、発汗ができなくなり体温調節ができなくなった。髄液検査で蛋白がやや高く、ギラン・バレー症候群と診断された。

ただし、血液検査、神経伝達速度は正常、頭部CT/MRI は正常であった。大量γ-グロブリン療法を受けたが、これは効果があり、麻痺はとれ、腱反射は戻り、瞼も挙がり、箸ももてるようになった。なお、左耳の聞こえが悪く耳鼻科併診で水が溜まっており鼓膜切開で一時的に改善したが、その後も繰り返し、しばらくはチュービングを行った。

音に過敏となり、窓外の蝉の鳴き声、トラックのブレーキ音などで身が震える思いを繰り返した。

入院1 ヶ月後

車椅子から歩行器へ移り、その後Bリハビリテーション・センターへ転院した。

Bリハビリテーション・センター転院1 年後から

病的なだるさ、ひどい疲労感が始まり、睡眠障害(入眠障害)、頭痛、吐き気、全身痛が加わり、食事も喉を通らなくなり、体重が10kg 減少した。爪がデコボコになり、肌はかさかさになり、抜け毛が多くなった。体温調節ができず、手汗がひどく、持っている紙がびしょびしょになるほどであった。生理は定期的にくる。

Cセンターへ入院し、ステロイド・パルス療法を受けたが効果なく、再度、大量γ-グロブリン療法を受け、全身痛だけは軽快した。現在も長時間(~30 分)歩くと著しい疲労感に襲われるので、車椅子を使用している。腕の筋肉がギュッと張っているかと思うと脱力する。便秘・下痢の繰り返しがある。

立ち眩み、動悸、めまい、車酔いはいつもある。低血圧があり、上が75-80mmHg のこともしばしばある。乳汁が出たことはない。失神したのは1 回だけ。雨降り、台風など低気圧や緊張・心的ストレス、生理前は症状が悪化する。集中力は低下した。計算、書字、読書は普通にできるが、近い記憶が頭に残らなくなった。

通学状況

通院や入退院を繰り返しつつも、なんとか通学している。通学の送迎は、母が毎日行っている。6 時間授業の時は、毎日2 時間ほどしか出席できず、あとは保健室で休まなくてはならない。汗をかけず体温調節できないため、体育に参加できない。


年月日不明

ギラン・バレー症候群、軽度の高次脳機能障害、左耳難聴、筋膜炎、ワクチン接種部位疼痛、吐き気、背部疼痛、悪寒戦慄、腱反射消失、歩行障害、指先のしびれ、足のしびれ感、体温調節障害、音過敏、倦怠感、睡眠障害(入眠障害)、頭痛、食欲不振、体重が10kg 減少した、爪の障害、皮膚乾燥、脱毛亢進、手掌の多汗、失神、集中力低下、ワクチン接種後症候群、筋肉痛の転帰は不明、脱力、紅斑、眩暈、ひどい疲労感、下痢便秘交代型、立ちくらみ、動悸、車酔い、低血圧、短期記憶障害の転帰は未回復、全身の痛みの転帰は軽快。


診断に関連する検査及び処置の結果

理学的所見

腱反射は正常レベル、圧通点18/18 で陽性、筋把握痛(aiiodynia)(+)、関節所見なし。高次機能障害はない。

血液所見

炎症所見:なし。甲状腺機能:正常。膠原病スクリーニング:異常なし。
頭部CT/MRI:異常なし。神経伝達速度:異常なし。
髄液蛋白:48mg/di、髄液糖:56mg/di、髄液細胞数:1/mm3、オリゴクローナル・バンド:陰性


報告者意見

本例は、全身痛・背部痛・持続性頭痛などの疼痛性障害

→紅斑・掻痒性皮疹などのアレルギー

→眩暈・吐き気・著しい脱力・腱反射の消失・手指のしびれ・体温調節不全・立ちくらみ・下痢便秘の繰り返しなどの自律神経障害

→音過敏などの感覚異常

→異様なだるさ・疲労感・睡眠障害(主に入眠障害)

→軽度の高次脳機能障害、と進行しており、一方、種々の血液検査、頭部CT/MRI、神経伝導速度など現行の検査技術では異常が検出できず、「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」と診断した。

ギラン・バレー症候群について、診断した病院に問い合わせたところ、髄液蛋白:48mg/di、髄液糖:56mg/di、髄液細胞数:1/mm3、オリゴクローナル・バンド:陰性、と蛋白細胞乖離はなく、定型的なギラン・バレー症候群ではなかったことが判明した。

 

 

(ソース:【資料12-1】副反応疑い報告等の取扱いについて)

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000504813.pdf