症例34

本例は医師からの報告。患者:14 歳、女性

1回目接種15 分後

左前腕~指先の痺れ、左前腕~指先の痛み、左前腕~指先脱力を発現。

接種2日後

 A 病院整形外科を紹介受診。左前腕の腫脹、屈筋群の筋力低下を認めた。
年月日不明 左前腕屈筋の筋萎縮、握力低下を発現。

ギランバレー症候群の疑い(重篤性:入院または入院期間の延長が必要なものおよび企業重篤)、両下肢麻痺(重篤性:入院または入院期間の延長が必要なものおよび企業重篤)を発現。

ワクチン接種前はなかったが、数か月に一度腹痛、失神発作を発現。睡眠障害、短期記憶障害を発現。
両下肢、遠位優位の知覚鈍麻(触覚、振動覚ともに鈍麻)。

接種1 年6 ヶ月後

A病院整形外科は終診。腫脹は軽減、筋力低下も改善したが握力の左右差は残存。肩甲帯、上腕の左右差はない。左前腕の腫脹、屈筋群の筋力低下の転帰は回復。

接種3 年1 ヶ月後から

B整形外科へ通院。握力低下について経過観察。左前腕しびれ、脱力、痛みのみであった。独歩、走行可能であった。

接種4 年後から

食物アレルギーを発現。さばアレルギーとなる。

接種1688日後

15 分間の左上肢、右下肢痙攣を発現。その後1 時間、四肢の痛み、四肢のしびれを発現。
その後、右足関節以遠の運動障害、右足関節以遠の知覚鈍麻(重篤性:企業重篤)、右下肢全体の痛みを発現。痛みは足底まで偏在性はなし。
その後、伝い歩き、松葉杖、車椅子の移動になる。
ロキソプロフェンナトリウム水和物を内服。左上肢、右下肢痙攣、四肢の痛みの転帰は回復。

接種1689日後

脳外科にてCT 検査するが異常なし。

接種1694日後

B整形外科にてプレガバリン処方するが無効。

接種1697日後

午前中から左下腿の痛みを発現。
両下腿鈍重感を発現。
両下肢脱力(重篤性:入院または入院期間の延長が必要なもの)を発現。車椅子移乗にも介助を要するようになり、A病院整形外科受診。
ギランバレー症候群を疑い、C内科病院受診し入院。

客観的な検査成績、血液、髄液、電気生理は全く異常なし。

神経学的検査では客観性のある腱反射などは正常。

握力低下、筋力低下は不明。

ギランバレー症候群、慢性再発性根神経炎は否定。

ADEM は全く病像が異なる。心理テスト的な検査所見あり。

接種1698日後

C内科病院でパロキセチン塩酸塩水和物処方。

接種1703日後

症状は改善傾向なし。車椅子、両上肢を使って立位維持は可能。

接種1704日後

両下肢麻痺としてA 病院にてリハビリ目的入院。

両下肢脱力は改善みられず。下肢しびれ、痛みについては改善傾向。時間によって波がある。
病室で坐位で勉強している。笑顔ではきはきと話し、悲壮感や倦怠感はみられない。

接種1705日後

転換性障害に症状がとてもよく似ている。痙攣を呈することもある。

接種1708日後

両下肢1~2 の麻痺。著変なし。

接種1709日後

左前腕、夜間痛あり。ロキソプロフェンナトリウム水和物効果不十分。ロキソプロフェンナトリウム水和物は内服継続で、以前有効であったプレガバリン(75mg×1 カプセル夕食後)内服開始。

接種1710日後

勉強している様子。床上座位で髪にドライヤーをかけているが、動作に不自由はなさそう。左握力低下。端座位で足関節背屈、膝伸展、股関節屈曲は徒手筋力検査で2。踏みつける動作でほとんど力が入らない。

接種1712日後

座位で勉強。両上肢、両下肢、四肢の痛みが2, 3 日に一度数分間(長くて10 分程度)動作に関係なく出現する(安静時もあり)。片側上肢および片側下肢に同時に痛みがでることはない。ロキソプロフェンナトリウム水和物3T 分3、プレガバリン2C 分2 に増量。

接種1715日後

朝、右後頭部と左前腕の痛みあり。
昼頃まで続いてロキソプロフェンナトリウム水和物内服で改善。ロキソプロフェンナトリウム水和物3T/day、プレガバリン1T 夕/day 内服中。座位の保持は安定している。D 大学病院神経内科あてに紹介状作成。

接種1718日後

前日の夜も当日昼も眠れず。夜中の痙攣はなし。仰臥位で下肢挙上、大腿部の筋収縮は確認できるが下肢の動きはほとんどなし。その際の反対側の踵部背側への負荷の増強はわずかに増加する。

接種1723日後

自分で車椅子の長距離移動は難しい。著変なく、リハビリ継続。

接種1724日後

母親には感情表出ができている模様。鼻水を発現し、エピナスチン塩酸塩4 日分処方。外泊予定あり。

接種1727日後

ロキソプロフェンナトリウム水和物、プレガバリン内服中。リハビリ加療しているが、痛みとしびれの有意な改善傾向はなし。

接種1730日後

リハビリ前から軽度の左下肢痛あり。リハビリでは関節運動を少々しただけで左下肢痛がとても強くなり中止して帰室。原因は不明。応答するのがしんどそうに見える。
車椅子からベッドへの移動は腰保持の介助で可能。移動・体動にともなう左下肢痛増強なし。SLR 動作で疼痛増強もない。左下肢痛の局在ははっきりせず。筋攣縮なし。足背動脈触知良好。冷感なし。
ロキソプロフェンナトリウム水和物およびプレガバリン、昼ロキソプロフェンナトリウム水和物服用。ジクロフェナクナトリウム50mg挿肛。
ジクロフェナクナトリウム投与1 時間後、寝ているうちに痛みがとれて5/10 程度に改善。苦悶様表情から笑顔が見られるようになった。ジクロフェナクナトリウム有効か、経時的自然回復かは不明。

接種1732日後

外出外泊中に強い疼痛発作は無し。床上での体交、読書、食事動作は自立。著変なし。

接種1733日後

笑顔がみられる。疼痛発作はなし。床上座位、荷物の片付けができている。

接種1736日後

外泊開始(飛行機移動)。笑顔がみられる。著変なし。

接種1736日後


時点 両下肢麻痺、左前腕脱力以外の症状は回復。

接種1738日後

D大学病院受診。 

接種1740日後

外泊中に四肢の痛みの出現あり。内服とがまんで乗り切った。床上体動可能。著変なし。

接種1741日後

A病院神経外科退院。

退院時診断名:両下肢麻痺 退院時処方:ロキソプロフェンナトリウム水和物、レバミピド、プレガバリン、エピナスチン塩酸塩、酸化マグネシウム、デカリニウム塩化物

接種1743日後

D 大学病院神経内科入院。6 週間程度となる見込み。

 

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接種後、失神発現までの時間:不明
有害事象に対する治療:
接種当日~接種1 年6 ヶ月後頃 左前腕脱力について通院、経過観察
(歩行障害に関する情報) 最終的な確定診断:未定
検査の有無 (1) MRI:無 (2) CT スキャン:(接種1689日後) 異常なし (3) 筋電図:無 (4) 神経伝導検査:無 (5) 筋生検:無 (6)その他の検査:髄液検査 (接種1697日後) 正常

 

(ワクチン接種とギラン・バレー症候群

本ワクチン接種日:接種当日 最初の症状の発現日:接種当日

 

[事象の詳細]

本事象が最初に発現したときの様子を記載して下さい:左上腕に接種後、15 分してから左前腕~指先しびれ、痛み、脱力が出現。接種4 年4 ヶ月後(現在)まで改善せず。

以下のいずれかの症状・徴候がありましたか?:はい(疼痛)
「はい」の場合、症状・徴候、部位/パターンおよび進行度について具体的に記載して下さい:上記の通り

その他の症状・徴候はありましたか?:はい

「はい」の場合、具体的に記載して下さい:接種1688日後両下肢麻痺


身体的・神経学的検査の結果(バイタルサイン、罹患四肢の深部腱反
射、運動機能、脳神経検査所見および感覚器検査所見)を記載して下
さい:バイタルサイン正常、腱反射正常、両下肢MMT2 の麻痺、脳神
経検査実施なし、両下肢知覚鈍麻
本事象の経過および転帰を記載して下さい:接種1697日後C内科病
神経内科に入院。ギランバレー症候群ではないとの診断を受け、接
種1704日後A 病院神経外科入院。リハビリするも改善なく、接種
1741日後退院。接種1743日後D 大学病院神経内科入院。
[診断検査]
全血球数、分画および血小板数:接種1697日後 正常 電解質/肝酵
素値:接種1697日後 正常
脳脊髄液分析(例:CSF 蛋白値、CSF 総白血球数、CSF 単核細胞数、
オリゴクローナルバンド):接種1697日後 正常
抗ガングリオシド抗体:接種1697日後 正常
カンピロバクター・ジェジュニー検査(例:便培養、血清IgA/IgG/
IgM 抗体):なし その他の検査結果(例:ウイルス検査、抗体スクリ
ーニング、妊娠反応、ECG):なし
中枢神経の画像検査(MRI またはCT スキャン):なし 神経伝導検査
(例:EMG、ENG)または誘発電位検査:正常
[既往歴]
悪性疾患(例:リンパ腫):いいえ 妊娠または分娩:いいえ 最近
受けた手術:いいえ 脊髄外傷:いいえ 最近、感染(例:胃腸また
は呼吸器感染)を来したことがありますか?:いいえ
関連のあるその他の病歴/リスク因子(例:HIV、全身性エリテマト
ーデス、サルコイドーシス、重症筋無力症、蛇咬傷、ダニ媒介性疾患、
重金属中毒)はありますか?:いいえ
[ワクチン接種(6 ヵ月以内)]:未記載
[併用薬]:未記載
診断に関連する検査及び処置の結果
接種1689日後 脳CT:異常なし
接種1697日後 血液・髄液・電気生理検査で正常
心理テスト的な検査:所見あり
オリゴクローナルバンド:陰性 ミエリンベイシック蛋白:陰性(40.0
以下)
細胞数:1/3(基準値:15/3 以下) 細胞分類:598 リンパ球:100
ノンネアペルト:(-) パンディー:(+-) トリプトファン:(-)
比重:1.006(基準値:1.005-1.007)
キサントクロミー:ミトメズ
髄液蛋白定量:29(基準値:8-43) 髄液糖定量:61(基準値:50-
75) 髄液クロール:126(基準値:120-130)
誘発電位検査所見 左右正中神経NCV:正常、脛骨神経神経NCV:正
常、左正中神経SEP:正常、右脛骨神経SEP:正常
接種1704日後FES:(右)0(左)4 Ho/Wa:(右)+/+(左)-/- GRT:
(右)24(左)10 程度 deit:(右)5(左)4 bicops:(右)5(左)
4 WE:(右)5(左)3 WF:(右)5(左)3- FE:(右)5/(左)3-
Triceps:(右)5(左)3- P:(右)2(左)2 Q:(右)2(左)2 T:
(右)2(左)2 AC:(右)0(左)0 SLR 動作:下腿の痛みの誘発あ
り 心電図:洞徐脈 HR44 血液検査:PTINR 1.13 他はすべて正常範
囲内
レントゲン 胸部:肺野に異常陰影なし、頚椎:アライメントはスト
レート、胸椎:正常、腰椎:L5 の仙骨化あり
治療製品:プレガバリン、ロキソプロフェンナトリウム水和物、エピ
ナスチン塩酸塩、ジクロフェナクナトリウム、レバミピド、酸化マグ
ネシウム、デカリニウム塩化物およびパロキセチン塩酸塩水和物

症例35

本例は医師からの報告。 患者:女性

サーバリックス2回目接種後

前腕、下腿で血管に沿って皮膚に細長い紅斑が出現。掻痒感なし。これは現在までの4 年間、出没を繰り返している(生理前に出現することが多い)。

サーバリックス3回目接種後

3日目に強い眩暈に襲われ、吐き気を催した。しかし部活のバレーボールはできていた。耳鼻科を受診し、異常なしと言われた。

接種447日後

背部疼痛(重篤性:非重篤)を発現、悪寒戦慄(重篤性:非重篤)を発現。 背部に疼痛を感じ、悪寒戦慄が出現し、疼痛は全身に広がった。

接種448日後

帯状疱疹を疑い皮膚科を受診したが、根拠がないと言われた。

接種451日後

背部痛は暫く続いたため、A 病院へ紹介された。脱力に悪化傾向があり、入院となった。

接種451~452日後

背部痛増強し、腱反射が消失した。脱力は進行し、箸ももてず歩行ができなくなり車椅子を使用した。特にワクチンを3 回接種した左側の脱力が強かった。

この頃、脱力は上肢・下肢だけでなく瞼が挙がらない、ろれつが回らない、寝返りも打てないなど、全身で起こっていた。

指先のしびれ、足のしびれ、発汗ができなくなり体温調節ができなくなった。髄液検査で蛋白がやや高く、ギラン・バレー症候群と診断された。

ただし、血液検査、神経伝達速度は正常、頭部CT/MRI は正常であった。大量γ-グロブリン療法を受けたが、これは効果があり、麻痺はとれ、腱反射は戻り、瞼も挙がり、箸ももてるようになった。なお、左耳の聞こえが悪く耳鼻科併診で水が溜まっており鼓膜切開で一時的に改善したが、その後も繰り返し、しばらくはチュービングを行った。

音に過敏となり、窓外の蝉の鳴き声、トラックのブレーキ音などで身が震える思いを繰り返した。

入院1 ヶ月後

車椅子から歩行器へ移り、その後Bリハビリテーション・センターへ転院した。

Bリハビリテーション・センター転院1 年後から

病的なだるさ、ひどい疲労感が始まり、睡眠障害(入眠障害)、頭痛、吐き気、全身痛が加わり、食事も喉を通らなくなり、体重が10kg 減少した。爪がデコボコになり、肌はかさかさになり、抜け毛が多くなった。体温調節ができず、手汗がひどく、持っている紙がびしょびしょになるほどであった。生理は定期的にくる。

Cセンターへ入院し、ステロイド・パルス療法を受けたが効果なく、再度、大量γ-グロブリン療法を受け、全身痛だけは軽快した。現在も長時間(~30 分)歩くと著しい疲労感に襲われるので、車椅子を使用している。腕の筋肉がギュッと張っているかと思うと脱力する。便秘・下痢の繰り返しがある。

立ち眩み、動悸、めまい、車酔いはいつもある。低血圧があり、上が75-80mmHg のこともしばしばある。乳汁が出たことはない。失神したのは1 回だけ。雨降り、台風など低気圧や緊張・心的ストレス、生理前は症状が悪化する。集中力は低下した。計算、書字、読書は普通にできるが、近い記憶が頭に残らなくなった。

通学状況

通院や入退院を繰り返しつつも、なんとか通学している。通学の送迎は、母が毎日行っている。6 時間授業の時は、毎日2 時間ほどしか出席できず、あとは保健室で休まなくてはならない。汗をかけず体温調節できないため、体育に参加できない。


年月日不明

ギラン・バレー症候群、軽度の高次脳機能障害、左耳難聴、筋膜炎、ワクチン接種部位疼痛、吐き気、背部疼痛、悪寒戦慄、腱反射消失、歩行障害、指先のしびれ、足のしびれ感、体温調節障害、音過敏、倦怠感、睡眠障害(入眠障害)、頭痛、食欲不振、体重が10kg 減少した、爪の障害、皮膚乾燥、脱毛亢進、手掌の多汗、失神、集中力低下、ワクチン接種後症候群、筋肉痛の転帰は不明、脱力、紅斑、眩暈、ひどい疲労感、下痢便秘交代型、立ちくらみ、動悸、車酔い、低血圧、短期記憶障害の転帰は未回復、全身の痛みの転帰は軽快。


診断に関連する検査及び処置の結果

理学的所見

腱反射は正常レベル、圧通点18/18 で陽性、筋把握痛(aiiodynia)(+)、関節所見なし。高次機能障害はない。

血液所見

炎症所見:なし。甲状腺機能:正常。膠原病スクリーニング:異常なし。
頭部CT/MRI:異常なし。神経伝達速度:異常なし。
髄液蛋白:48mg/di、髄液糖:56mg/di、髄液細胞数:1/mm3、オリゴクローナル・バンド:陰性


報告者意見

本例は、全身痛・背部痛・持続性頭痛などの疼痛性障害

→紅斑・掻痒性皮疹などのアレルギー

→眩暈・吐き気・著しい脱力・腱反射の消失・手指のしびれ・体温調節不全・立ちくらみ・下痢便秘の繰り返しなどの自律神経障害

→音過敏などの感覚異常

→異様なだるさ・疲労感・睡眠障害(主に入眠障害)

→軽度の高次脳機能障害、と進行しており、一方、種々の血液検査、頭部CT/MRI、神経伝導速度など現行の検査技術では異常が検出できず、「HPVワクチン関連神経免疫異常症候群」と診断した。

ギラン・バレー症候群について、診断した病院に問い合わせたところ、髄液蛋白:48mg/di、髄液糖:56mg/di、髄液細胞数:1/mm3、オリゴクローナル・バンド:陰性、と蛋白細胞乖離はなく、定型的なギラン・バレー症候群ではなかったことが判明した。

 

 

(ソース:【資料12-1】副反応疑い報告等の取扱いについて)

https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000504813.pdf